酔漢がおぼつかない足取りで歩くさまを「千鳥足(ちどりあし)」と言いますが、そのちどりとかけています。
生酒粕の状態で通年鳥に与えるという取り組みは全国的に無いと思います。(酒粕が出る時期は限られている為と発酵が進んで取り扱いしにくくなる為)
そのことが少しでも伝わるよう酒粕推しのインパクトのあるネーミングにしました。
【商品化の経緯】
一昨年暮れ(2018年12月)富山県内の酒造会社より酒粕を鶏のえさに使えないかと相談を賜りました。好奇心もあって、平飼いをしている鶏たちの目の前に生の酒粕の塊をそのまま置いたところ、鶏たちが喜んで食べている様子を見て、商品化をめざすこととなりました。 しかしながら、酒粕(板粕)は一般的に冬期(12月~3月)の日本酒の絞りの時期にしか出てこず、また基本利用者側が引き取りをしなければならないので、二の足を踏んでいました。 そこで高岡本社からほど近い若鶴酒造㈱さんに相談したところ、快諾頂き実現に踏み出しました。実際やってみると保管や毎日毎日の給与作業で手間暇がかかりますが、鶏たちの状態(けづや)が良くなり、今年の4月に富山県農林水産総合技術センターにある食品研究所に導入された味覚センサーで卵の味覚を調べると甘みと旨味が従来の弊社の卵より強くなる傾向があると分かりました。 そこで正式に商品化をして、広く価値の分かって頂ける方にお届けすることと致しました。
【ちどりたまごにかける仁光園の想い】
1.生のままの酒粕を通年与える
⇒そのことで酒粕に含まれる酵母菌やビタミンB群を損なわず鶏に与えることができます。そのことで鶏たちの腸内環境が改善され健康増進に役立ちます。
難しい点としては、麹菌が生きているために乳酸発酵が進んで柔らかくなり、鶏たちに分け与える作業がし難くなります。また日本酒の製造過程で出る酒粕は出てくる期間が限られているため、そして品質の保持のため、低温での保管が必要となり冷蔵あるいは冷凍設備とそれに伴う費用が必要となります。
しかし生産者として鶏たちが喜んで生酒粕を食べている様子を見て、鶏たちのストレス低減・栄養補給・健康増進の観点からこの方法をとっています。
2.飼料原料の地元調達により真の食料自給率を高め、地産地消を推進する
⇒日本国内の畜産業は海外産の穀物に9割以上頼っています。現在弊社では「ひら飼い米寿の卵」で主原料(全体量の5~6割)をトウモロコシから富山県産米に切り替えていますが今回地元産の酒粕を与えることで原料の富山県産率が7割弱に上がります。すべての産業が国をまたいだグローバルサプライチェーンの恩恵を受けていますが、これからは出来るだけ身近なところで調達することで、サプライチェーンの毀損があっても生活必需品である卵の供給が止まらないようにするためのチャレンジでもあります。
3.地元の未利用物を畜産業が活用することで、地域循環の環を構築する。
⇒高度成長期以前の農村部では各農家で牛豚鶏を地域で出る未利用物(くず米、魚のあら、おから等)を与えて飼養し、それで育った畜産物を地域で頂いていました。それが自由資本主義経済による豊かさを求める高度成長期に農村から都市へ労働人口が流出し、効率の追求のための分業化が今日の豊かさを生み出しました。その豊かさを享受しながらも、昨今頻発する大規模な自然災厄(新型コロナウィルス発生、豪雨強風等気象災害、地震等)により、現在の社会生活を見直す時期に来たように思われます。
弊社は北陸にある規模の小さな養鶏場です。海外からの穀物を配合飼料としシステム化された畜舎で近代的効率的に畜産業を行う大きな業界の流れは、日本に在住するすべての方に良質の動物性たんぱく質を手ごろな価格で提供するために必要とされていると考えます。しかしながら我々小規模な畜産農家がそれぞれ独自の取り組みを行うことで、業界として多様性による安定供給を可能とすると信じます。それぞれの地域で息づく事業者が手を取り合い、その地域を未来永劫豊かな財産として後世に引き継いでいく仕組みづくりに挑戦していきます。